モードファッションに詳しくない方でも、「ヨウジヤマモト」という名前を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。黒を基調とした独特の世界観で知られるこのブランドは、世界のファッション史に深い足跡を残してきました。
2022年のパリコレでは、俳優の松重豊さんがランウェイを闊歩し大きな話題となりました。今回は、ヨウジヤマモトというブランドの魅力と、松重さんのパリコレ出演について詳しくご紹介します。
ヨウジヤマモトを生み出した山本耀司という男
ヨウジヤマモトは、日本を代表するファッションデザイナー・山本耀司氏が手掛けるブランドです。
戦後日本で育まれた才能
山本氏は1943年、戦時下の東京で産声を上げました。幼い頃に父を亡くし、母親が営む洋装店で育った彼は、自然とファッションの世界に触れる環境にいたのです。慶應義塾大学を卒業した後、文化服装学院でデザインを本格的に学び、1969年には若手デザイナーの登竜門として知られる「装苑賞」を受賞しました。
この賞は、コシノジュンコさんや高田賢三さんなど、後に世界的デザイナーとなる人物たちも輩出した権威ある賞です。山本氏のキャリアは、ここから本格的にスタートしました。
パリで起こした「黒の衝撃」
1972年に「ワイズ(Y’s)」を立ち上げ、1977年には東京コレクションでデビューを果たした山本氏。そして1981年、満を持してパリコレクションに登場します。
このとき、同じ年にパリコレに出展した川久保玲氏の黒を全面に押し出した革新的なスタイルのコム・デ・ギャルソン 黒の衝撃と呼ばれ、世界中のファッション関係者を驚愕させたのです。当時のパリでは華やかな色彩やボディラインを強調する服が主流でしたが、山本氏は真逆のアプローチで新しい美の概念を提示しました。
「ヨウジヤマモト」というブランドの世界観
パリコレでの成功を受け、1984年に山本氏は「株式会社ヨウジヤマモト」を設立しました。
黒が語るメッセージ
ヨウジヤマモトの最大の特徴は、何といっても黒を基調としたデザインです。しかし、ただ黒いだけではありません。左右非対称のカッティング、ゆったりとしたシルエット、そして計算し尽くされた独特のドレープが、着る人に唯一無二の存在感を与えます。
山本氏は「黒は謙虚で傲慢だ」という言葉を残しています。この哲学が、彼の作品すべてに貫かれているのです。
多彩なブランドライン展開
ヨウジヤマモトはひとつのブランドではなく複数のラインで構成されています。
1981年にパリコレで始まったハイエンドなウィメンズライン「ヨウジ ヤマモト(Yohji Yamamoto)」を中核に、機能性を重視した「ワイズ(Y’s)」、1984年に誕生したメンズライン「ヨウジヤマモト プールオム(Yohji Yamamoto POUR HOMME)」などがあります。
特に注目なのが、2002年にスタートした「ワイスリー(Y-3)」です。これはスポーツブランド「アディダス」とのコラボラインで、モードとスポーツを融合させた画期的なシリーズとして人気を集めています。
また、2011年設立のオンライン限定ブランド「サイト(S’YTE)」や、2014年始動のユニセックスライン「グラウンド ワイ(Ground Y)」など、時代に合わせて新しい挑戦を続けています。
松重豊がパリコレのランウェイを歩いた日
2022年の秋冬パリ・メンズコレクションで、ヨウジヤマモトは東京で特別なショーを開催しました。
プロのモデルを圧倒した存在感
このショーには、プロのモデルに交じって、仲村トオルさん、伊原剛志さん、加藤雅也さんといった日本を代表する俳優たちが登場しました。そんな”イケオジ”たちの中でも、ひときわ注目を集めたのが松重豊さんです。
松重さんは全身黒ずくめのロングコート、ジャケット、ストール、シャツ、パンツ、ブーツというヨウジヤマモトの最新コレクションを纏い、ランウェイをゆっくりと歩きました。その佇まいは圧倒的で、プロのモデルたちもタジタジだったといいます。
「老虎残夢」が語るもの
松重さんが着ていたコートの背中には「老虎残夢」という漢字四文字のメッセージが刻まれていました。他のコートには「もうガマンしなくていいんです。」といったメッセージも入っており、今回のコレクションのテーマが19世紀初頭の写真機に撮影された男たちの姿だったことが伺えます。
普段は「孤独のグルメ」などで親しみやすい雰囲気を醸し出している松重さんですが、このショーでは鋭い眼光でギャラリーを睨みつけ、不気味なまでの存在感を放っていました。トレードマークのグレイヘアも黒ずくめの服に映え、まるで別人のようだったといいます。
常識を破壊し続ける挑戦者
山本耀司氏の挑戦は、服作りだけにとどまりません。
様々なブランドとのコラボ
アディダスをはじめ、「ウブロ」「モンクレール」「ポーター」「ドクターマーチン」「シュプリーム」「NEW ERA」など、数々の有名ブランドとコラボを実現しています。
さらに興味深いのは、キャラクターとのコラボレーションです。「仮面ライダー」「サイボーグ009」「ONE PIECE」「エヴァンゲリオン」といった日本が誇るコンテンツとも積極的に関わり、2022年には読売ジャイアンツとのコラボユニフォームも発表して話題を呼びました。
一度は経営破綻を経験
順風満帆に見えるヨウジヤマモトですが、2009年に経営破綻という大きな試練を経験しています。しかし、外部支援を受けて事業再建に成功し、その後も新たなブランドラインの創設や国際的な受賞を重ねてきました。
山本氏は「仕事中に倒れるのが理想」と語るほど、デザインに情熱を注いでいます。80歳を超えた現在も現役デザイナーとして第一線で活躍を続けています。
まとめ
ヨウジヤマモトは、単なるファッションブランドではありません。常識を破り、新しい価値を創造し続ける”黒のカリスマ”山本耀司氏の哲学そのものです。
その服は年齢や性別を超えて幅広い層から支持され、国内外の著名人から一般の人々まで、多くのファンを魅了し続けています。松重豊さんのようなベテラン俳優がランウェイを歩く姿は、ヨウジヤマモトが単なる若者向けのブランドではなく、すべての世代に向けたメッセージを発信していることを示しています。
これからもヨウジヤマモトは、モードの未来を照らし続けることでしょう。










